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令和4年度原子力規制委員会 第72回臨時会議議事録

2023年2月13日に行われた原子力規制委員会で、老朽化した原子力発電所の継続利用を可能にする決議が行われた。規制委員の中で反対したのは一名のみ。歴史的な決定にもなりうるので、委員の名を記録するとともに、議事録の翻刻を行った。出典はこちらのページにあるPDFである

委員長 山中 伸介(元大阪大学大学院工学研究科 教授)
委員 田中 知(元東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻 教授)
委員 杉山 智之(元日本原子力研究開発機構安全研究・防災支援部門安全研究センター 副センター長)
委員 伴 信彦(元東京医療保健大学東が丘看護学部(現東が丘・立川看護学部) 教授)
委員 石渡 明(元東北大学東北アジア研究センター 基礎研究部門地球化学研究分野 教授)

委員の紹介|原子力規制委員会

反対したのは石渡委員のみであった。こうして眺めると、自然科学者は石渡氏のみである。



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令和4年度原子力規制委員会 第72回臨時会議議事録

令和5年2月13日(月)

原子力規制委員会

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令和4年度 原子力規制委員会 第72回臨時会議

令和5年2月13日 18:30~19:50

原子力規制委員会庁舎 会議室A

議事次第

議題:高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第9回)

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○山中委員長

それでは、これより第72回原子力規制委員会を始めます。

本日の議題は「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第9回)」です。

説明は、原子力規制企画課、金城課長からお願いします。

○金城原子力規制部原子力規制企画課長

それでは、資料に基づきまして、金城の方から説明させていただきます。

最初の1.と2.の「趣旨」「経緯」のところでございますけれども、前回、概要案に関する科学的・技術的意見に対する考え方を了承いただきましたけれども、概要案の決定に当たりまして意見がありまして、更に委員間で議論することとされました。

その概要案を踏まえて条文案を作成しまして、本日はこの概要案についての決定を付議し、あと、条文案ですけれども、その了承を諮るものでございます。

まず、安全規制の概要ということで、これは別紙1のとおりでございます。また後ほど簡単な追加説明をいたします。

4.のところの法案等のところですけれども、条文案を別紙2-1、2-2と準備いたしまして、この了承をいただきたいというものでございます。これはなお書きにもありますように、閣議決定されるまでの間に法文上の技術的修正が加わる可能性があるということで御承知おきいただければと思います。

なお書きにございますように、原子力基本法の一部改正案、使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の一部改正案については、臨時会議において内容を確認いただいておりますけれども、原子力発電の利用に係る原則の明確化、円滑かつ着実な廃炉の推進等のためのもので、規制や原子力規制法上の責任に影響を与えないといったことで、規制に影響を及ぼすものではないといったことで確認いただいているかと思います。

2ページ目に移りますけれども「今後の予定」としましては、この後の当然審議結果にもよりますけれども、決定、了承いただけましたら、こういう予定で進めたいと考えてございます。

3ページ目、別紙1ですけれども、これまで議論いただいた安全規制の概要といったもので、運転期間に関するものではないということでございます。

追加の説明が必要なのが、4ページ目に移らせていただきまして、11.の①のところで、円滑な移行のためにあらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができるといった規定になっていますけれども、こちらの方、一部義務化したところがございますので、後ほど資料で説明させていただきます。

5ページ目からの別紙2-1が条文案でございます。改めるといったもので条文を構成しているもので、準備移行段階の話などはこの中で書かれてございます。

あと、21ページ目、別紙2-2は新旧対象条文となってございますけれども、この中に書いてあることを簡単に要約したものが45ページ目の別紙2(参考)にございます。

どういったところにどういう内容が書いているかは、こちらを御覧いただければ、目次

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のようなものになっていますので、御覧いただければと思いますけれども、先ほど後ほど説明すると言ったものは46ページの<附則>のところでございまして、施行日時点で運転開始後30年を超えて運転している発電用原子炉は、長期施設管理計画の認可を受けなければならない時点が明確でないといったことから、準備行為として認可を義務づけることとしているところでございます。

ここに「施行日」と出てきますけれども、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日といったことで、この条文案を準備してございます。

あとは参考資料でございますけれども、47ページ目は参考1といったことで令和2年の見解をお届けしておりますし、最後の49ページ目の参考2は、一方で、電事法(電気事業法)の中で運転期間に関する整理が進んでおりますけれども、こちらの方、上の方に40年原則、下の方に最長で60年に制限するといった枠組みが書いてあるかと思います。

原子炉等規制法は基本暦年で、運転期間は最大でも暦年で60年といったことでありますけれども、こちらの方を御覧いただければお分かりのとおり、運転期間は暦年では60年を超過するといったことになりまして、炉規法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)の規定とは本質的に異なるものといったことで、今、電事法の準備が、【政府検討中】とございますけれども、進められているところでございます。

資料の説明は以上でございます。

○山中委員長

どうもありがとうございました。

先日の原子力規制委員会において、高経年化した発電用原子炉に関する安全性の検討に関する議論の中で、安全規制の概要について賛否を問うたところ、幾つかの意見がございました。委員それぞれの本件に対する心情については十分理解した上で、まずは、技術的な観点から、本日は高経年化した発電用原子炉の安全規制について議論を進めてまいりたいと考えております。

本日は3点議論を進めたいと思っています。

まずは運転期間の考え方、その次に、高経年化した原子力発電所の安全規制について、具体的に技術的な議論をさせていただきたいと思っています。最後に、審査の長期化と本件についての関係についての対応について、議論させていただきたいと思っております。

まず、金城課長から、資源エネルギー庁の運転期間についての考え方と安全規制のタイミングの問題について、説明をしていただきたいと思います。

○金城原子力規制部原子力規制企画課長

それでは、資料のエネ庁(資源エネルギー庁)の方の関係と当方(原子力規制庁)の方の関係ということでございますけれども、まず、先ほどエネ庁の方は御説明いたしましたので、基本的に60年を超えて暦年で運転できるといったようなものですけれども、まず、我々の方の安全規制ですけれども、別紙1の方に戻っていただけますでしょうか。3ページ目でございます。

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別紙1の方にございますように、令和2年の見解を踏まえて利用政策の側で運転期間に関する制度の検討が進められているといったところでありますけれども、我々としましては、見解を踏まえまして利用政策の側がどういう運転期間に設定しようとも、しっかりとした高経年化した発電用原子炉に関する安全規制を確保するといった観点からこのものを進めておりまして、一つ目にございますように、まずは、エネ庁側の運転期間に関わりなく、炉規法の中では暦年を使っていますけれども、暦年で運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間を基にその劣化を管理するための計画を策定しまして、この計画について原子力規制委員会の認可がなければ。

○山中委員長

すみません。具体的な安全規制の説明というのは、また後ほど説明していただくかも分かりませんけれども、具体的に運転期間が資源エネルギー庁でどういう提案がなされていて、我々原子力規制委員会として安全規制をどういうタイミングで行っていくのかということについて、端的に説明していただけますか。

○金城原子力規制部原子力規制企画課長

失礼しました。

それでは、エネ庁の方の提案は、最後に説明いたしました参考2、49ページ目の資料になります。

こちらの方ですけれども、まずございますのが、発電用原子炉を運転することができる期間、運転期間といったものは、最初に使用前検査に合格した日から40年といったことでございます。こちらの方は基本的に炉規法の方で言っている40年と同じような規定になるかと思います。

一方で、40年を超えて運転しようとするときは経済産業大臣の認可を受けてといったことでありますけれども、こちらの方の要件は、①から④に並んでいますように、安全規制というよりは政策上の観点から、最初にありますような平和目的とかから始まりますけれども、例えば、③にございますように、非化石エネルギー源の利用促進を図りつつ電気の安定供給をといったことで、まず、延長の認可といったものが議論されてございます。

大きく違いますのは、その下にありますけれども、運転する期間は最長で60年という枠組みは維持というのですけれども、こちらにございますように、以下の停止期間については60年の運転期間のカウントから除外するといったことで、①から⑤とございますけれども、例えば、①にありますのは、安全規制等に係る法令等の制定や改正、運用の変更に対応するために運転を停止した期間といったものは、最長60年のものからは除外するといったものが今準備されているといったものであります。

その他、行政処分、行政指導、仮処分命令等、やはり技術的というよりは政策的な観点から、そういったものの停止期間について、カウントから除外といったものが検討されているといった状況でございます。

このような説明でよろしいでしょうか。

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○山中委員長

ありがとうございます。

資源エネルギー庁の考え方は、今、金城課長から話があったとおりです。この考え方からいたしますと、令和2年7月29日の原子力規制委員会の見解としてまとめた、運転期間は意見を申し述べるべき事柄ではなくという考え方に基づきますと、資源エネルギー庁の運転期間に対する考え方からすると、我々原子力規制委員会は60年以上のタイミングまで安全規制を行う必要があり、原子炉等規制法の改正を行わなければ、安全規制ができなくなる可能性があると私自身は考えます。

2年前の原子力規制委員会の見解も、10年間の様々な積み重ねの結果だと考えております。最初の5年の間は運転延長の制度を設計して、実際に4基の原子炉の審査を行って、技術的な検討を経て認可をいたしました。5年前から運転期間についてどうあるべきかというのを議論してまいりました。

高経年化に伴う劣化というのは一律ではなくて、個々の原子力発電所で確認していくべきものであると考えられます。これは既に原子力規制委員会で見解として申し述べてきたことと変わらない事柄ですが、私もそのように考えます。科学的に原子力発電所の寿命が一義的に決められるというものではない以上、一定期間ごとに劣化の程度を個別に確認していくことが必要であると考えます。

また、新しい知見がなければ原子炉等規制法を改正できないというものではなく、例えば、新検査制度の導入などはその一例かと思います。

ここで委員の方の運転期間に対する様々なお考えはあろうかと思いますけれども、御心情抜きで技術的な議論を行いたいと思いますので、それぞれの委員から御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○石渡委員

まず、本日の資料について一つ申し述べたいのですが、今、山中委員長も引用された令和2年7月29日の参考1となっている本日の文書ですが、これはどういう文書かということなのですけれども、ここに書いてある表題は「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化との関係に関する見解」という文書であります。

1項目目に書いてある「いわゆる原子力利用の推進の機能に該当するものであって、原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない」というようなことは、これはもっと大きなことでありまして、延長認可の審査と、それから、発電用原子炉施設の経年劣化との関係という特定の課題に関することではないように思うのです。

そもそもこの文章はどういう場で出てきた文章かといいますと、これは令和2年度の第18回原子力規制委員会の議題5であります。議題5、このときは五つしか議題がなくて、これは最後の議題で、普通、最後の議題というのは、大体報告とか、そういうことが多いわけですけれども、どういう題名の議題だったかといいますと「経年劣化管理に係るATENA」、これは原子力エネルギー協会ですか、事業者団体ですね。「ATENAとの実務レベルの技術的

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意見交換会の結果を踏まえた原子力規制委員会の見解(案)について」という議題の中でこの文章が出てきました。

ですから、これは当然、6回行われたATENAとの実務レベルの技術的意見交換会の内容を踏まえた文書になっているはずであると思います。実際、そういうATENAとの懇談、意見交換を踏まえた内容も当然盛り込まれておりますが、「原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない」という、この部分に関する議論は、6回の議事録を私は全部検索しましたが、こういう議論が行われた形跡はありません。

これは、ですから、この文章のこの部分がどういう経緯でここに盛り込まれたのか、私は非常に疑問に思っております。この文章は、昨年9月末以来、何回も何回もこの場に出てきているわけですけれども、この文章は、特に「原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない」ということについて、原子力規制委員会が、その当時、よく議論してこれを決めたかというと、私はそうではなかったのではないかと思います。これは、杉山委員以外の委員は、皆さん、ここにいらっしゃったわけですから。

ちなみに、参考1のこの文章の一部でも御執筆なさった委員の方はいらっしゃいますか。

誰も執筆していないのですよね。ということは、つまり、これは更田委員長か、あるいは原子力規制庁の誰かが執筆した文章です。

私は、この文章をあたかも金科玉条のように使って、原子力規制委員会が関わるべき事柄ではないということが原子力規制委員会の全体の意志として確固として決定されたというものでは、私は、ないのではないかと考えるのですけれども、皆様の見解はいかがでしょうか。

○山中委員長

少なくとも、私の見解を述べさせていただきますと、私自身も出席させていただいていましたし、前委員長も出席をさせていただいたCNOとの会合、これも3回、この5年間で行われておりますし、その中でも、運転期間というのはどう考えるべきものであるのか、あるいは運転停止期間というのをどう考えたらいいのかということについては、議論をさせていただきました。

したがいまして、運転期間そのものについては、どう考えるべきなのかということ。確かに石渡委員の御指摘のように、タイトルと、いわゆる提案の1.から6.までございますけれども、非常に様々な内容が盛り込まれております。運転停止期間についても、劣化が進むものであるという、そういう見解もまとめられておりますし、6.については、運転期間そのものについては政策的に判断すべき事柄であって、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではないという、そういう事項も含まれております。

これは少なくとも様々な場での意見交換も含めて、委員も出席し、前委員長も出席した場で議論がなされたことをまとめた資料であると思っております。

私の見解はそういう見解でございますし、それぞれの委員の御見解を改めて確認させていただきたいと思います。9月26日に就任させていただいて、私が就任した段階で、改め

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て本件については、杉山委員が参加されておりましたので、原子力規制委員会の場でこの見解についてどうですかということは一度お諮りさせていただいたと思うのですけれども、改めて個別に委員の方の御意見を聞いてみたいと思います。いかがでしょうか。

○田中委員

この令和2年7月29日の原子力規制委員会のときに、議題の中で五つ目だったのですけれども、こういうものが示されて、石渡委員が言われるように、十分議論したかというと、若干議論が少なかったかも分からないのですけれども、私としても、これを聞いて、一つの方向としてこういうものでいいのではないかなとそのときに思いました。

また、その後、昨年9月頃でしたか、これもまた議論が進んでいくときにももう一遍これをじっくり見たのですけれども、ここで言っている見解といいましょうか、大きな考え方は、私としては、このようなことで技術的・科学的に考えてもいいのかなと思います。

もちろん原子炉等規制法の中の43条のところに、運転期間の話と、どのように見ていくかの両方を書いているのですけれども、国会審議でいろいろな議論があったかと思うのですけれども、このような考え、この見解は、私とすれば妥当なものではないかと思いますし、今回の概要とか法改正などもこの方向かなと思います。

以上です。

○山中委員長

そのほかの委員はいかがですか。

○杉山委員

私はこのペーパーが出たときには委員ではなかったわけですけれども、では、改めてこれを見てどうか。まず、今の炉規法における40年プラス20年という定めが安全確保の上でベストかと言われたら、私はそうは思っていなくて、それは40年が30年だったらいいかとか、そういう数字の問題は気にしておりません。

この定め方で、今の決めだと、最初の使用前検査が終わった段階でタイマーが始まる。

そこからの年齢を数えるわけですね。そこにほかの制度と組み合わせれば、ある程度は最新知見を盛り込むことを義務化できるのかもしれないのですけれども、単純な年齢で定めるというのは非常に抜けが多くて、要は、古い設計で今新しく建設して、今、使用前検査を終えて最新の炉で40年使えますよというのは、私は、正直、納得がいかないのです。

以前から設計の古さを何とか判断したいですということを申し上げてきたのですけれども、これは、だから、古さとかは関係なしに、単純にタイマーがスタートしたら、40年を保証しているかのように私には見えて、その意味で、数字の問題というよりは、この決め方が余り私は原子力規制委員会のやり方とフィットしないような気がします。

もう一つの問題は、先行例といいますか、実際、40年を迎えるに当たって延長認可を受けた炉が幾つかございますけれども、満40歳になるまでに次の20年の認可を受けなければいけない。だから、我々の立場でいうと、許可をしなければ、そのタイミングで間に合わなければ、もうチャンスはない。もう廃止措置ですよという。

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実際、そうなったかというと、ならなかった。それはやはりそこで原子力規制委員会が判断に時間をかけて、時間切れになって、だから、もうおしまいですよというのは、それは我々が、ある意味、寿命を決めたようなことになってしまうわけで、当然、それは避けたかったのだろうと思いますけれども、ただ、慌てて審査をしなければいけないような我々の締切りになってしまうという今の制度は何かおかしくないかと、外から当時ずっと見て思っておりました。

だから、審査する側が締切りを設けられて、そこまでに合格を出さなければいけないような作りになってしまっているところも、今の炉規法の、これは炉規法の本体だけで決まっている部分ではないのかもしれないのですけれども、何か変な立て付けだなと思っておりました。

そういうところもありまして、今、このペーパー、個人的には表現ぶりとかで必ずしも100%アグリーでないところもあることはあるのですけれども、基本的には単純な数字で何年までと決めるというのは原子力規制委員会のやり方にフィットしないであろうという点では、私はこのペーパーに現在の立場では納得しております。

その上でどうするかという議論をこのしばらくこの場でしてきたわけで、私は今、何が一番これまでの議論で問題があったかなと振り返ると、やはり説明が足りなかった。原子力規制委員会のたびにこういう議論をして、先ほど申し上げた設計の古さとか、あるいは基準を厳しくすることによって古いものを排除するというような仕組みを作れるという、フレームワークとしては用意できるという話をしたのですけれども、今回、パブコメパブリックコメント)にかけた資料というのは余りにも限定された範囲で、我々の規制の全体像が説明されていない。

それは今までのいろいろな資料をかき集めれば、見えてくるのかもしれないのですけれども、やはり議論を進める中できちんとそういうところは整理して、見せながら進めてくるべきだったというか、今からでもそれをやらなければいけないと思っております。

これは、だから、説明だけの問題かというと、そうではないのですけれども、それでも少なくとも我々はきちんとした説明責任を十分果たせていないと感じております。

○伴委員

これを確か決めたときに、ATENAとの実務レベルの技術的意見交換会ということだったので、本当に科学的・技術的な見地から、運転期間のカウントの仕方というのはどうあるべきなのかというのを、予断を持たずに議論しようではないかという形で確か始まったと理解しています。

それで、では、本当に科学的・技術的見地から何年が妥当であり、あるいはどうカウントするのがいいのかということを原子力規制委員会原子力規制庁内部で、あるいはATENAの関係者との間で議論をしたときに、結論としては、それは一律に決められないという結論だったと思うのです。

そもそもこの40年、60年というのは、技術的見地が全くなかったわけではないにしても、

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やはり最終的には政策判断として決められたものであって、科学的・技術的見地から何年が妥当であるということを我々が決めることはできないということをここに盛り込んだので、表現上の問題はあるかもしれませんけれども、その趣旨としては私もそれでよいのだと理解しています。

○山中委員長

そのほかはいかがでしょう。

少なくとも高経年化に伴う劣化というのは、当然、その年数が減れば劣化は生じます。ただし、それは一律ではなく、個々の原子力発電所でやはり確認すべきものであって、何か科学的に原子力発電所の寿命が一義的に定まるものではない。それ以上、運転期間というのを我々が一義的に定めていいものであるということは判断できないと私自身は考えます。

石渡委員、その点について、いかがでしょうか。

○石渡委員

ですから、この文章というのが原子力規制委員会に出されたその場の議論といいますか、その議題から見て、ATENAとの高経年化に関する意見交換のまとめとしてこれが出されているわけです。

実際、去年9月にATENAが高経年化に関する自分たちの簡単なパンフレットみたいなものを出したわけですけれども、その中にも参考1と本日出されているこの資料が引用されております。引用されておりますけれども、例えば、第1項目とか、最後の第6項目のような、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではないというような文章は入っておりません。真ん中辺の技術的な結論だけが引用されています。

その意味で、原子力規制委員会が関わるべき事柄ではないというのは、これは今、伴委員がおっしゃったように、技術的・科学的にある年数を決めるということはできないと、そういうニュアンスで元々書かれていたことだと私は理解しました。

ですから、これを根拠にして、例えば、炉規法の40年ルールをなくしてもいいとか、そういう議論には私はならないのではないかと思います。

以上です。

○山中委員長

根本から食い違ってきたのですけれども、この辺りはいかがでしょう、ほかの委員。

○田中委員

先ほど山中委員長が言われたように、各々の個別の実用炉というか、発電所の状況を見て、それがあと何年、10年延長できるかどうかというのは、それは個別に科学的・技術的な判断から決めることであって、一律にそこはなかなか決められないと思うのです。

同時に、また、石渡委員が言われるように、現在の43条のどこどこの第1項に40年とあるのですけれども、そのときにいろいろ国会で議論があったかと思うのですけれども、そのときに本当に法体系の中であそこに40年のことを書くことがいいのかどうかというのは、

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もちろんそのときの国会での議論なのですけれども、でも、今回のいろいろな法改正の状況を見ると、ちょっと別に分けた方がいいのではないかという観点で今議論されているところだと思うので、私自身とすれば、やはりいろいろな、我々が科学的・技術的な観点から、事業者が提出する長期施設管理計画等について、しっかりと確認するということが原子力規制委員会の大きなミッションであると、大きな知見であるということを考えると、

このような方針がいいのかなと私自身は思います。

○山中委員長

そのほかはいかがでしょう。

7月29日の段階で、私自身、この考え方に対して、やはり運転期間については、政策的に判断をしていただくべきことであると。つまり、長くなるか、短くなるかというのは利用政策上の判断であって、我々原子力規制委員会が何か運転期間を定める、あるいは原子力に対して提言するとか、提言しないとかということに対して物を申す立場にはないという、そういう意見を申し上げたと私自身も記憶しております。

少なくとも我々がやるべきことは、高経年化した原子力に対する安全規制を確実に行うこと、基準に適合しているかどうか、基準に適合していなければ、その原子炉の運転は認可できないということになりますし、基準に適合していれば認可できるということになるわけです。

現状でこの10年積み重ねてきたのは、40年という運転延長認可制度を、1回で20年先まで見通して60年までの運転を認めるということを我々は行ってきて、技術的にも科学的にもそれは評価として妥当なものであるという経験を積んできたわけです。

したがいまして、期間がどうなろうとも、我々の任務としては、やはり安全規制をしっかりと行っていくということであって、その考え方がこの資料の6番目の項目の考え方であると私自身は考えます。

○伴委員

参考1の資料の3.目ですけれども、ここで、では、40年とは何なのだという話になったときに、結局、このときの結論としては、一つのタイミングでしかない、評価を行うタ

イミングという以上の意味を持ち得ないというのが結論だったと思うのです。

それで、結局、その評価の、一遍立ち止まってそこでしっかり見て、それで、更に運転を延長できる状態にあるかどうかというのをむしろもっときめ細かく見ていくことで、経年劣化の評価をきちんとしていくというのが、今、提案されているやり方だと思って、40年が特別ではなくて、30年以降という言い方をしていますけれども、場合によっては、40年より手前であっても駄目なものは駄目だときちんと言える。そういう制度にするという意味では合理的なものだと私は考えています。

○石渡委員

ただ、現在の制度でも40年目に特別検査を行うわけですよね。40年目は。そういうことになっているはずです。一つ、しっかりした規制を行うというのは、もちろんそれはその

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とおりで必要なことなのですけれども、では、60年目に何をするかということが今は決ま

っていないと思うのです。これを決めずにしっかりした規制を行うといっても、これは余り、どういう規制を行うのかが具体的になっていないと思うのですけれども、そこについてはいかがでしょうか。

○山中委員長

少なくとも50年目までは現行のルールで十分であるということは、議論させていただいたと思います。60年については、具体的に何か現行の申請項目について、プラスアルファで加える必要があるかどうかということについては、今後、議論をさせていただきたいという、そういうこれまでの議論だったかと思います。

その点については、石渡委員がおっしゃるとおり、具体的な項目については決まっておりませんけれども、少なくとも50年までの項目はきちんと見ていくということで、プラスアルファでどういう項目を加えるべきかということについては、いまだ決まっていないというのは事実でございます。

○石渡委員

ただ、こういう提案をされるということであれば、私は、少なくとも見通しぐらいは、このような規制をやる方針であるということぐらいは現時点でやはり決めるべきことではないかと考えます。

あと、先ほど説明があった参考2の、これは電気事業法の方の話だと思うのですけれども、これは前回も述べましたが「安全規制等に係る法令等の制定や改正、運用の変更に対応するため、運転を停止した期間」は60年にプラスするという案のようなのですが、我々審査に関わっている人間としては、原子力安全のために審査を厳格に行って、長引けば長引くほど運転期間がどんどんその分だけ延びていくと。私はこれは非常に問題だと考えます。

以上です。

○山中委員長

これは3番目に議論しようかなと思っていた点で、審査に対する公平性・公正性というのが損なわれる可能性がある。いわゆる審査を慎重にやって、時間が掛かれば高経年化が進むという、そういうプレッシャーが審査官にも掛かりますし、審査を担当する委員にも掛かってしまうと。

それと、高経年化がこのルールでは進んでいくというのは事実でございますので、これは審査の問題と高経年化の安全規制の問題と両面をはらんでいるかと思いますので、最後の項目として議論をさせていただきたいと思います。

次に、まず、運転期間についての考え方というのは、やはり石渡委員とまだ一致しないところがあろうかと思いますけれども、少し議論を先に進めさせていただきたいと思います。

次に、高経年化した原子炉の安全規制の具体的な、技術的な議論をさせていただきたい

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と思います。

先ほどからお話をさせていただいているように、劣化というのは、原子力発電所の使用期間が長くなればなるほど、当然、進んでまいります。ただし、我々が責任を持たなければならないのは、期間ではなくて、ある時点で我々が高経年化した原子炉について設けた安全に対する基準が満たされているかどうかをきちんと技術的に判断するかどうかということに尽きると私自身は考えています。

ある時点で、例えば、40年で、この先20年運転を継続していいという現在の制度であれば、そういうルールに基づいて我々は審査を行って、認可できたものについては運転を認めるし、万が一、40年で認可できなければ、運転することは認められないという、そういう制度になっておりますけれども、これからは30年以降、同じ仕組みを10年ごとに設けて、きちんと審査をしていこうという制度にしていこうと考えています。

技術的には40年で行っている仕組みを10年ごとに行うということで、基本的に今まで40年で取得できた技術的な経験というのは生かした状態で評価ができると。少なくとも50年目までは、項目については変える必要がなかろうというような議論をさせていただいたところです。

これまでの科学的・技術的な見地からお話をすると、圧力容器、あるいはコンクリート、電気ケーブルの劣化、これを40年の時点で20年間延長可能であるということを科学的に評価をして、認可できたものについては、実際に実証できたという、我々が検証することができたと考えています。それを30年、40年、50年、60年も、当然、同じレベルの評価以上のものになろうかと思いますけれども、そのように審査を進めていけば、より厳正に基準を満たしているかどうかの判断ができると考えています。

物理的な特性については、これまでお話ししてきたような中性子脆化でありますとか、電気的な性能の劣化でありますとか、あるいはコンクリートの強度の劣化等が重要になってくるかと思いますけれども、更に運転期間が延びれば、先ほどから話題に上っているような設計の古さについても、設計思想の転換のような項目については、我々はきちんとバックフィットの制度の中で対応できるように考えていくということが必要かと考えています。

私の安全規制に対する考え方については、以上です。

委員の方から意見を頂戴できればと思います。どうぞ。

○田中委員

大きな考え方とすれば、そういうものだと思いますし、もちろん原子炉によって中性子束が違うとか、行動等が違うから、相手とする原子力発電所の特徴を踏まえて、いかに科学的・技術的に見るかが大事です。

これまでも50年といいますか、60年までのところは今の方針でいいのではないかという議論がありました。さらに、60年を超えるときにはどのような項目をどのように見ればい

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いのかというのは、まさしく科学的・技術的な知見をもって、そこはしっかり見ないといけないと思いますし、そういった意味では、炉によって状況が違いますから、炉の特徴も踏まえて状況をしっかり見ていき、更に長期になってくると、評価項目、あるいは評価の視点等々がより厳しくなっていくのは当然であるかと思います。

以上です。

○杉山委員

新しいこの制度案に基づくと、30年を過ぎたところから次の10年の認可を与えるといいますか、現行の40年を迎えるときに一気に次の20年を認めてしまうという方法、それに比べると、私は、かなり刻んだ、10年というのは最長10年という意味ですけれども、そういう意味で、そのたびにきちんとした基準適合性も含めて、劣化も含めて見るということで、これまでよりは細かく見ることができる。

40年目にもちろん従来行ってきたような特別点検を行う。これは残すわけでありまして、60年目に何をするかを決めないとという石渡委員の先ほどの御意見、それはもちろんある程度分かりますけれども、そこは非常に慎重に決めなければいけないのだと思います。だから、今、それを決めた上でこの先に進もうというよりは、それはそのときまでにじっくりと議論する。そういうことなのかなと私は思っております。

○伴委員

今も高経年化の評価は行われる仕組みになっていて、50年のところまではこれまでどおりでいいだろうという山中委員長の御発言がありましたけれども、つまり、そこまでは、言ってみれば、今、高経年化の評価をやっているものを規則レベルに上げていく。より厳格に審査を行って、長期計画を認可していく。そういう仕組みになるわけですけれども、実質的には変わらないという見方も一方でできるわけですよね。

それで、石渡委員の御懸念は、だとすると、そこまでは今までと同じでいいとしても、60年を超える、そこのところでどうするのだと。それは、今、杉山委員がおっしゃったように、じっくり議論すべきだと。それはそうだと思いますけれども、一方で、石渡委員にしても、私にしても原子力工学の専門ではありませんので、そういう者からしたときに、では、それはできますかという問いが出てくるわけです。勝算はあるのですかと。そこのところのできれば率直な御意見をほかの3人の委員に伺いたいなと思います。

○杉山委員

具体的にこれをもって設計の古さを判断するという定量化するようなものは難しいのですけれども、今、やはり新しい原子炉、日本というより海外で導入されているもの、実用化されているもの、そういったものが備えている機能、そういったものをある程度義務化するといいますか、測定して得られるような数値ではなくて、どちらかというと、必要な機能を備えているかどうか。私はそういったものを求めていくのかなと思っております。

それを入れるというのはすごく大きな判断でありまして、というのは、それを後づけするのは多分難しいような機能になる可能性が高くて、そうすると、ばたばたと今ある炉が

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駄目になるかもしれない。それをある程度はもうやむなしといいますか、そこをあれこれ

しんしゃくせずに必要な機能として我々が決める、そういうところがあるのだと思っております。

今の段階では、そのぐらいのことしか言えないのですが。

○伴委員

すみません。一つ確認なのですけれども、それは、私、以前に発言したのですが、性能規定ではなくて、むしろ使用規定に近いものを入れていくと、そういうことですか。

○杉山委員

はい。そういった部分も必要かと思っております。性能というのは、後づけでも、何だかんだいって達成できる部分がかなり多いと思うのです。例えば、リスクを下げるといったときに、計算上のリスクを下げるということはできてしまうといいますか。ただ、そうやってつぎはぎだらけの施設、それに信頼性を置けるかと、確保できるかと。そういった意味では、最初からそのつもりで作った施設に勝るものはないと考えておりまして、そういう意味で、後づけで何とかできる部分、できない部分というのを、ある意味、ふるいにかけるというか、そういった思い切った要求は必要になってくると思います。

○山中委員長

一つ、先ほどの伴委員からの御質問に対するお答えをするとすると、今、重要な劣化のモードとして、圧力容器の中性子脆化とコンクリートと電気ケーブルの特性の劣化、この三つを挙げましたけれども、その三つについては、少なくとも劣化については、60年以上の実データがもう手に入っております。実際の炉に対して、60年以上運転してもこれぐらいの健全性は評価できるという、そういう科学的な根拠もございますし、論拠もございます。

また、ケーブルについて、あるいはコンクリートについても、これまで破壊検査、あるいは加速試験等からきちんとした予測式も提案されておりますし、劣化をすれば、当然、ケーブルなどは劣化の予測に基づいて重要なところは交換することもできますし、また、コンクリートについても、劣化予測式については、十分な精度を持って予測ができますので、少なくとも現行で60年の運転期間というものについては、十分な評価ができるかなと。

あるいはそれ以上の、60年というところで仮に評価をしたとすると、次の10年ということはある程度は担保ができるかなと考えております。

○石渡委員

伴委員がよくおっしゃる設計の古さということがございますよね。これは、伴委員のニュアンスではかなり抽象的に聞こえるのですけれども、このATENAの資料を見ると、これはもっと非常に具体的でありまして、要するに、50年も60年もすると部品が調達できないということを深刻に、やはり事業者ですから、考えているわけですよね。

設計の古さということは、正に直接的にはそういうところだと思うのですよね。それに対する対策ということを、ATENAの方ではここでは考えてはいるようですけれども、やはり

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古いものについては、そういう実際的な障害というものが起きてくる。これは避けられないと思うのです。

現在の法案、ここに示されている法律の案では、30年から10年ごとに検査をすると。実はそれは10年ごとに検査をするということしか書いていなくて、要するに、どんどん経年化は進んでいくわけですよね。これに対して、例えば、40年目、50年目と、検査する項目といいますか、検査の内容といいますか、これを経年数に応じて変えていく必要というのはないのでしょうか。ずっと同じ検査でいいわけですか。私はそこのところも非常に、この法案について疑問に思っているところなのです。

○山中委員長

少なくとも、その根拠を申し上げますと、40年の運転延長認可制度で、40年の1回の申請、これは事業者が出してきた様々な物理的な項目に対して、我々はきちんと審査をして、20年先の評価をして、運転延長してもいいという、そういう審査結果を出しているわけです。これから少なくとも10年ごとで、これから先、一番直近でいいますと50年ということになりますけれども、50年で40年にやったと同じような評価をしていただいて、そこから先また10年を予測しましょうと。そのように60年まで予測できていることを、10年ごとでやっていきましょうということで、当然、精度も上がりますし、審査の厳正さも上がるだろうと私は思っています。

○杉山委員

今の石渡委員の御質問で、年がたつにつれて評価の仕方を変えるといいますか、これはあくまでも劣化の評価であって、その劣化を考慮した状態でどんな基準を満たすかというところで、多分、基準の側で、どのぐらい古いものに対してはこういうものを求めるというような、そういった効果を盛り込むのだと私は思っておりまして、だから、これは、今ここで定めているのはあくまでも劣化の評価の話だけが書かれていて、先ほどというか、最初に私が申し上げたように、全体像が見えないというのはその辺でありまして、これと組み合わされる基準の側を、古いものをふるい落とすような仕組みを設けて、それと併せることで、劣化を考慮してもそのときに求められる基準を満たすということを、そのときごとに評価しなければいけない。そういう仕組みになると私は認識しております。

○田中委員

今、いろいろな委員の人が言われましたけれども、私とすれば、事業者が策定した長期施設管理計画が、いろいろな劣化事象の進展とか、いろいろなことを考えても、基準に適合しているかというところを、原子力規制委員会がしっかりとそこが見られるかどうかが一番のポイントになってくると思います。

もちろん、長期になってくると、いろいろな劣化も進んでくるし、予測式というのがあっても、そのとおりにいかないものもあるかも分からないけれども、不確実性があるとか、そういうところに対して、どんぐらいの幅でもって考えられるのかとか等々、総合的に本当に判断する能力が我々にないと、長期施設管理計画も認可できなくなってくるのだと思

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うのですけれども、そういうことで、我々としてもそれなりの大きな責任があるかと思います。

○山中委員長

そのほかはいかがでしょう。

何か石渡委員、いわゆる高経年化の安全規制について、こういうところが不十分だというところがもしあれば、御意見を頂ければと思います。

○石渡委員

ですから、今の杉山委員のお話は、炉規法というような大きな法律ではなくて、その下の法律で決めるということですよね。

○杉山委員

実際にどういった基準を満たすかといった基準の部分は、そうですね、炉規法本体の中ではなくて、その下部で、今までもそうでしたけれども、決めていくのだと思っております。

○石渡委員

ただ、私としては、例えば、経年数に応じた検査をするとか、そのような文言があってしかるべきではないかと思うのですけれども、ただ10年後とにやるということしか今は書いていないですよね。私はそういうところを申し上げただけです。

以上です。

○山中委員長

当然、個々の原子炉について、経年劣化の度合いというのは変わってきますし、当然、置かれた環境によって、考えないといけない劣化のモードも変わってきます。これについては、私もそういう発言をさせていただいたかと思うのですけれども、特に時間がたてばたつほど、その炉の特徴というのが出てくるので、応じた検査を、少なくとも60年については、やらなければならないと思っています。50年目までは、少なくとも今、60年目までは40年の段階で予測ができているわけですから、50年はきちんとその予測が正しいかどうかというのを、実データを取って認可制度の中で見ていくと。これまでよりも格上げした制度の中で見ていくという、そういうやり方でいいのではないかなと思っています。

○伴委員

今の山中委員長の御発言ですけれども、そうすると、60年のところに関しては、最大公約数的なといいますか、ミニマムセットみたいなものを、当然、これまでの今やっているものもやった上で、あとは炉型であったり、あるいは特定の炉ごとに異なる項目を要求することがあり得るという、そういう理解でよろしいですか。

○山中委員長

要求するか、あるいは事業者が申し述べてきた自分たちの炉に対する理解ですね。例えば、大きな地震を体験したとか、あるいは炉水に大きな変化があったとか、そういったところ、きちんと自分たちのプラントを理解した上で申請を出してきてもらうと。我々はそ

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れを本当にそうかどうかというのをきちんと審査していくというのが、50年目、あるいは60年目のあるべき姿かなと思っています。

○田中委員

その辺の具体のところというのは、規則で今後定めていくことになるのではないでしょうか。

○山中委員長

そのとおりだと思います。

いかがでしょう。ほぼ論点は出たかなと思っております。納得していただいたかどうかというのは少し分かりませんけれども、もう少し議論を続けたいと思います。

最後の審査の公正性に対する影響の問題です。私は、これまでどおり厳格な審査を行っていただくということで全く問題がないと思っています。仮に審査が長くなっても、そのような点と高経年化を結び付けずに、審査は審査として厳正に行っていただくということが我々に求められた正しい姿であると思いますし、それは地盤関係だけではなくて、プラント関係についても同じだと思います。問題があれば、ゆっくりと時間をかけてきちんと審査をしていただくという。

仮に石渡委員が危惧されているように、審査期間を故意に延ばすような事業者が出てきた場合には、原子力規制委員会として、当然、その審査がどのように行われているかというのはきちんと観察して、今でもしているわけですから、審査の中断、あるいは停止の措置というのを厳正に対応すべきであると考えますし、審査期間の長さによって仮に運転が延長された場合には、厳正に高経年化の審査を行って、基準を満たさなければ運転ができなくなるという、そこに尽きると思います。この点について、何かほかの委員、意見はございますか。

○杉山委員

例えば、審査に要した時間分、後で取り返せるというようにも読めますけれども、以前から議論しているように、出力運転中に進む劣化と、ただ何もしていない止まった状態でも進む劣化がありまして、後者の方は明らかにその分は進むわけで、審査の期間の間も。そういう意味で、私は事業者が時間稼ぎをするメリットは全くないと考えていまして、当然、そんなそぶりを見せたら、それに対しては厳正に我々の側から警告するといいますか、そういったところでそういった懸念を排除していきたいと思っております。

○田中委員

今、山中委員長が言われたように、審査を厳正に行うというのは当然のことであります。

我々も業者と意見交換等々をして、審査の効率化ということでそれなりの努力はやっているかと思うのですけれども、いくら効率化しようとしても、効率化したとしても、厳正に行うということはもちろんのことでございます。

○山中委員長

石渡委員、いかがですか。

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○石渡委員

「安全規制等に係る法令等の制定や改正、運用の変更に対応するため、運転を停止した期間」とここに書いてあるのですよね。例えば、審査上不備があって、審査を中断して検査に入ったというような事例が今までもありました。これは検査に入っている期間も、しかし、これは延びるわけですよね。多分そうなのだと思うのです。

要するに、我々の責任ではなくて、事業者側の責任でそういうことが起きて、それに対して我々としては、不本意ながらも審査を中断して検査に入らざるを得なかったと。それも、しかし、後で運転期間を延ばしていいよという話なわけですよね、これは。それは非常に私はおかしいと思うのです。そういう制度になるのであれば、これは審査をしている人間としてはちょっと耐えられないと思います。

以上です。

○山中委員長

事業者に非常に問題があるような場合には、本当にこれまでは、これまでといいますか、検査という形を取りましたけれども、少なくとも審査を中断する、あるいは停止をするという、そういう判断も今後必要になってくるかと思いますけれども、その辺り、石渡委員、いかがでしょうか。

私は、審査に対して何か早くするとか、短くするとか、何かそういうこと、あるいは長くなってはいけないとかということは全く考えておりませんし、審査については、これまでどおり厳正にやっていただければ全く問題ないし、そうでなければ、我々としては。

○石渡委員

私としてもそのつもりでおります。おりますが、審査を中断して検査に入っていた期間も、その分も運転延長していいということについては、私はそれはよくないと考えます。

○杉山委員

まず、我々審査を行う側が、利用政策側がどういった時間をカウントして、どういった時間をカウントしないというのをまず気にする必要はないのだと私は思っていて、我々が劣化評価をするときには、どんな理由で運転していなかったかというのは評価上関係ないわけなのです。私たちの審査で掛かった時間をカウントするか、しないかは、正直に言って、我々の審査、劣化評価等には全く影響を与えないことだと思っております。

影響を与えるとすれば、先ほどから言っていますように、古さを我々がフィルタにかけるような制度を導入したときに、単純に審査で時間が掛かった別の理由、不可避な理由であっても、それはそれで単純に原子炉を建設してからの時間がたっている。そういうところで審査といいますか、合格基準が厳しくなっていくはずといいますか、そのように我々はセットしようとしていますので、そこでつじつまが合うということにするのだと思います。

○山中委員長

私も高経年化の審査と審査そのものとは別に考えないといけないと。少なくとも高経年

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化をどのように我々が評価していくかという、そのタイミングの問題というのは、運転期間に対する政策側の判断であるという、私は、もうその結論というのはこれまでどおりの見解であるということですので、きちんと切り分けて考えないといけない。審査は厳正にやるべきだし、それは無用に事業者が仮に延ばすというようなことがあれば、審査をきちんと中断するというような手続をする必要があろうかと思いますし、そこに高経年化の何か別の問題を一緒に考えるというのは、審査は別の問題であると私自身は考えるのですが。

どうぞ。

○石渡委員

今、山中委員長がおっしゃったように、もし何かそういう不心得なことがあれば、審査を中断するというのはもちろんだと思うのです。ただ、しかし、審査を中断するのはいいですが、その中断していた期間も運転期間の延長に加わるわけです。これは切り分けて別の話だとおっしゃいますけれども、やはりこれは、その分だけ増えるということであれば、これは当然、原子力の安全に関わりますよね、劣化が進むわけですから。これはもう時間がたてば、どんどん進んでいくものがあるわけですから。だから、私は、そこを切り分けるというのはですね。

○山中委員長

そこにちょっと誤解があるようなのですが、当然、運転期間が長くなれば劣化は進んでいきます。ただ、我々がするのは運転期間に制限をかけるのではなくて、ある期日が来たときに基準を満たしているかどうかという安全規制をするのが我々の任務だと考えています。運転期間がどうのこうのというのを何か我々が科学的・技術的に判断するというのは、少しこれまでの議論とは違うかなと思います。そこがどうも石渡委員と根本的に食い違っているところかなと思いますが、いかがでしょうか。

○石渡委員

私はここの経産省経済産業省)の案に書いてあるとおりを理解して、そのように私自身の頭の中ではそうとしか理解ができませんので、そのように申し上げているだけです。

○山中委員長

運転期間についての考え方というのは、私ども原子力規制委員会で決めた結果というのはどうも納得できないというのが石渡委員のお考えと。

○石渡委員

はい。基本的に40年、60年という枠組みは変えないというのがこの経産省の案ですよね。

その枠組みを変えないのであれば、我々として積極的に炉規法を変えにいく必要は私はないと考えています。

○山中委員長

少なくとも40年、20年というところは原則ですけれども、運転停止期間をそこに加える

という資源エネルギー庁の案ですから、我々が安全規制を行っていくタイミングというのは、少なくとも60年を超えるケースが出てくると考えないといけないと私自身は思ってい

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るのですが。

他の委員、いかがでしょうか。2年前に出した結論と少し違う御意見が出ておりますけれども、その点についていかがでしょう。根本から御意見が食い違っていますので。

○杉山委員

私は、石渡委員のおっしゃることは別に食い違っているとは思っておりませんで、石渡委員の御懸念は、先ほどからおっしゃっているように、審査で要した時間の分が後ろにまた追加されてしまう。その分、劣化が進むのではないかと。当然、そうだと思っております。ですから、劣化を評価するときに当然不利になるということで、私はそれまでの話だと思っております。

エネ庁側、推進側が書いてある40プラス20というのは、今までの炉規法の記載との連続性を維持してそういう書き方をしていますけれども、事実上、このプラス20年ではないというのはもう内容からして明らかでありまして、炉規法側の記載とこれはもう一致していませんので、炉規法をそのまま残して、こちらをこのように改正するというのは不可能だと思います。

○山中委員長

石渡委員、いかがですか。

○石渡委員

私の考えはもう大分述べましたので、以上です。それ以上付け加えることはございません。

○山中委員長

何か事務方から付け加えることはございますか。

どうぞ。

○金子次長

次長の金子でございます。

先ほど石渡委員から、年数に応じた評価のような形を組んだらいいではないかというお話がありました。今も40年のところは別点検などがありますけれども、本日の資料の中の24ページを御覧いただきますと、劣化評価をどのようにやるのかということが書いてあります。石渡委員の御意見のように、年数に応じてという表現を使っているわけではございませんけれども、例えば、24ページの5項のところは「原子力規制委員会規則で定めるところにより」ということで、我々の議論でそれをどのようにやるかというのはきちんと定める形にしてございます。

それから、6項の認可をするための要件の中でも、劣化評価の方法は原子力規制委員会が定める基準に適合するという形で、どういう方法であればいいのかということについても、そのような形で設定はできるように枠組みとしてはなっているということだけ、事務局から申し添えさせていただきます。

○山中委員長

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そのほかに何かございますか。よろしいですか。

石渡委員、原子炉等規制法と電気事業法の両方に違う事項が記載されているという状態は、極めて安全規制上好ましくない状態だと私は思いますので、これは改正をしないといけないと。原子炉等規制法をきちんと改正して、高経年化した原子力発電所の安全規制を行っていくということをルール化するということが我々の任務だと思うのですけれども、その点について、やはり納得できないという御意見でよろしいですか。

○石渡委員

はい。炉規法というのは、ある意味、原子力規制委員会設置法とペアのような形で、そのときに制定された法律だと理解しております。炉規法というのは、したがって、原子力規制委員会が守るべき法律であると思っております。

我々として、もちろん科学的・技術的な理由、それから、より安全側に変化する、変えるという、そういうはっきりした理由があれば、これを変えることはやぶさかではございませんが、私としては、今回のこの変更というのはそのどちらでもないと考えます。

○山中委員長

恐らくそう考えられるところに、やはり運転期間について、安全規制で考えるべきであるという石渡委員のお考えだと思うのですが、そこに対しての考えが根本的に食い違っているかなと思うのですけれども、そういう理解でよろしいですか。

○石渡委員

それはそうかもしれません。

○山中委員長

そのほか、何か委員の方から追加する御意見はございますか。よろしいですか。

そうしますと、高経年化した原子炉の安全規制について、まず、根本の運転期間に対する考え方が石渡委員と他の委員と食い違ってしまったので、石渡委員のこの御心情というのは変わることがないかと思いますので、本日、改めて、前回、決を採りましたけれども、改めて委員の方から安全規制の概要案と法律の条文案についての賛否を一人ずつ伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○田中委員

まず、安全規制の概要のところと、それから、法律の改正案については、私はこれでいいかと思います。

○山中委員長

私も、両方ともこれで私は賛成したいと思います。

○杉山委員

私は、この中身の話、何が書いてあるかについては、この範囲については了承したいと思っております。それに基づいたこの法案の文案も同じくです。

ただ、やはり最初に申し上げたように、これは説明が圧倒的に足りないと思うのです。

そこがすごく、ちょっと言い方は悪いですけれども、気に入らなくて、今までこういう申

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し上げてきたようなことが、次の回の資料といいますか、書き物に余り反映されていない。

こういった限られた資料だけが最後のアウトプットになってしまっている。

パブリックコメントに出したときに、改めて見た人たちにそれまでの話が全然伝わっていない。それがすごく問題だと思っています。先ほど言いましたように、今からでもそういった説明の何か資料はきちんと世に出してほしいです。

あと、もう一つ、これを言ってしまっていいのかなというところはあるのですけれども、我々がこれを決めるに当たって、外から定められた締切りを守らなければいけないという、そういう感じでせかされて議論をしてきました。そもそもそれは何なのだというところはあります。

我々は独立した機関であって、我々の中でやはりじっくり議論して進めるべき話ではあるのですけれども、いろいろな他省庁との関係もあるのでしょうけれども、我々は余りそういう外のペースに巻き込まれずに議論をすべきであったと思っております。

ただ、もう一度言いますけれども、この範囲の書き物の中身は、これは特別すごいことを盛り込んだというよりは、今の制度の骨子の部分をまとめたものであって、それに関しては私は賛同いたします。

以上です。

○伴委員

別紙1の安全規制の概要、それから、条文案ですけれども、私は合理的な変化であるという意味では了承します。

ただ、杉山委員も今指摘されましたけれども、やはり外枠といいますか、制度論ばかりが先行してしまって、本来、我々にとってのサブスタンスであるべきところの基準といいますか、特に60年超えをどうするのだというのが後回しになってしまって、そこがふわっとしたままこういう形で決めなければいけなくなったということに関しては、確かに私も違和感を覚えています。

○石渡委員

私の意見は、この改変、法律の変更というのは科学的・技術的な新知見に基づくものではない。それから、安全側への改変とも言えない。それから、審査を厳格に行えば行うほど、将来、より高経年化した炉を運転することになる。こういったことにより、私はこの案には反対いたします。

○山中委員長

残念ながら、石渡委員の御賛同を得ることができませんでした。運転期間についての根本的なお考えが違うということで、これはもうこの考えは変わることがないかなと思いま

す。本日の賛否の結果をもって、原子力規制委員会の決定といたしたいと思います。両案決定をさせていただきたいと思います。

その上で、反対の石渡委員にも、今後の高経年化の安全規制についての議論については、積極的に参加していただきたいと思うのですが、その点については、いかがでございまし

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ょうか。

○石渡委員

もちろん、委員ですので、参加をさせていただきます。

○山中委員長

ありがとうございます。

そのほか、何か委員の方から御意見はございますでしょうか。

どうぞ。

○杉山委員

私は、ここを決を採って進んでしまっていいのかということには疑問は感じております。

ただ、石渡委員が今納得できないことに対して、きちんと納得のいくという、納得させることが目的ではありませんけれども、懸念がなくなるような基準の策定に関して議論していく所存でありまして、その際には石渡委員の意見もずっとお伺いし続けていきたいと思います。

○山中委員長

石渡委員、今後ともよろしくお願いいたします。

それでは、本日の原子力規制委員会はこれで終了したいと思います。どうもありがとう

ございました。